更新詳細とかゲームの話とかいろいろ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今のところ、書きためていたのはこれで最後です。
--------------------------------------------------------- 一謡の郷が見えてくると、きらの足が自然に止まった。 横を歩いていた水季もつられて立ち止まる。 「きらさん。どうしました?」 「ちょっと、怖くて……」 見上げると、きらにつられるように、水季もまた眉を寄せた。 袂をきゅっと握ったきらの手に、水季が自分の手をそっと重ねてくる。 「不安ですか?」 顔を曇らせるきらを覗き込む。きらは水季の手を握り返した。 「不安……そうですね。たぶんそうなんだと思います」 今まで何度か郷には行ったことがある。 水季と郷で会ったこともある。 けれどもその時は、こんな感情を抱いたことはない。 こんなにも不安なのは、きっと水季が郷に帰る日だからなのだろう。 兄弟のわだかまりは解けた。主従の再会も果たした。 あの日まで共に戦った一謡たちは、皆水季の帰還を喜ぶだろう。 けれども、その他の一謡は? それを考えると、怖くなる。 かつて水季が追放されたという事件のことを、きらは詳しく知らない。 概要はわかっているつもりでも、そこでどんな心情が動いたのかとか、九艘一謡それぞれにどんな深い傷をもたらしたのかとか、そういったことがわからない。 互いに歩み寄り、着々と和解に向かって動いているということは知っている。 けれど、今なお、どれだけの一謡が九艘を嫌っているのか。そして、殲滅派と呼ばれていた一派が未だに存在するのか。 何よりきらが怖れているのは、そういった人々に水季が利用されることだった。 水季はもう九艘殲滅の命を下すことはない。それだけは確信が持てる。 でも、水季の名前が、水季という存在がもたらすものは大きいだろう。 そして、違った見方もある。 九艘と和解したいと思っている一謡のほうだ。実際、そのような考えの一謡がどれだけいるかわからないけれど。 とにかくそんな人達がいたとするならば、水季は彼らにとって憎しみの対象となってしまうだろう。 殲滅派にせよ、和平派にせよ、水季が傷つくことが、きらには怖かった。 今こうして傍らに在る彼が、悲しむのを見たくなかった。 PR |
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(11/03)
(10/27)
(10/11)
(10/03)
(09/14)
プロフィール
HN:
とみぃ
性別:
女性
ブログ内検索
カウンター
最新トラックバック
|