更新詳細とかゲームの話とかいろいろ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
雑多ジャンル更新第1弾です。
ゲゲゲの鬼太郎より、キタネコ。 傾向はほのぼの。……ですが、猫娘はほとんど出てこないです。 キタネコというよりは、鬼太郎+子猫? 鬼太郎が偽者でもOKな方は続きからどうぞ。 「ね……」 呼び掛けようとした声を飲み込み、僕はそっと彼女に歩み寄った。 木の陰に、まるで隠れるかのように横になった猫娘は、くうくうと寝息をたてている。 その頬には幾筋かの涙の跡が見て取れた。泣き疲れて眠ってしまったのだろうか。 胸に鈍い痛みが走った。猫娘を泣かせたのは他でもない自分自身だ。それが故意でないにしろ、事実に変わりはない。 泣かせるつもりなんてなかったのに。 ただいつも通りにしていただけなのに。 何がいけなかったのだろう。 ……いや、原因はわかっているのだが。 「にゃ」 不意に、すぐ側から小さな鳴き声がした。 猫娘が目を覚ましたかと、慌てて伸ばした手を引っ込める。 けれど、目の前の少女は眠ったままだった。 ではどこから声がするのかと見渡せば、ちくりと刺さる鋭い視線。 眠る猫娘の腕の中、生まれてまだ幾月も経っていないだろう子猫が、毛を逆立ててこちらを見ている。 剥き出しになった敵意。この娘を泣かせたのはお前なんだろうと、声なき声が告げている。 「そうだよ。泣かせたのは僕だ。猫娘から聞いたのかい?」 「なーお」 そうだと言わんばかりの鳴き声を一つ上げ、子猫がひらりと飛び出してきた。 これ以上は近付かせないと、尻尾を立てて威嚇する。 吊り上がった眼と剥き出しになった牙に、つい先程の猫娘の姿が重なって見えた。 きっかけは、本当に些細なことだった。 僕が人間の女の子を見ていた。それだけ。 けれど、猫娘を激昂させるのには、それで充分だったらしい。 彼女が言うには『鼻の下が伸びていた』んだそうだ。 「……可愛いわね」 僕の視線の先を見て、言葉に軽く皮肉を込める。 その見え見えの嫉妬があまりにも可愛くて。 ちょっと困らせてみたかったのか、もっとやきもちを妬いてもらいたかったのか、今となってはよくわからないのだけれども。 「そうだね」 咄嗟に出た言葉はそれだった。 実際、その女の子がどんな顔だったのか、今となっては思い出せない。だって、僕が見ていたのはその子の顔ではないのだから。 だから結局、すべては猫娘の思い込みに過ぎない。 けれども、僕は全く悪くないのかと言われれば、言葉に詰まる。 彼女が怒って猫の本性を現しても、慌てて取り繕ったり、言い訳したり、そういった弁明を一切行わなかったからだ。 ただ、いつものポーカーフェイスを張り付けて。 何を怒っているのかわからない、そんな顔をしていただけ。 「鬼太郎のバカー」 あくまで飄々とした僕に、爪ではなく言葉を叩きつけて、猫娘は身を翻した。 その顔は怒ったままだったから、まさか泣くなんて思っていなかった。 「お前も猫娘が好きなんだね」 「にゃ?」 しゃがみ込んで子猫に目線を合わせる。 未だ威嚇の姿勢は解かれていないけれど、子猫は不思議そうな顔をした。 ああ、いま僕はどんな顔をしているんだろうか。 鈍感な振りをして、猫娘の好意に気付いていない風を装う必要は、今はない。 目の前の愛しい娘は緩やかな眠りの中にあり、対峙しているのは子猫のみ。 穏やかな顔なんだろうか。それとも切なげな顔なんだろうか。 「僕も……」 ぽつりと呟いた言葉に、子猫が「にゃあ」と声を上げる。 「好きだよ」 猫娘には決して言わない本心。 それがするりと言葉になって滑り出る。 子猫はただ「みー」とだけ鳴いて、擦り寄ってきた。 顎に手を伸ばす。ゴロゴロと鳴る喉を撫でてやると、子猫は気持ち良さげに目を細めた。 「こんな風に触れられたらいいのにね」 彼女の髪に、頬に、そして唇に。 触れてしまったら、きっと何かが変わってしまうから、今の自分には手を繋ぐことくらいしかできない。 好意を寄せてくれていることは、とっくの昔に気付いていたが、それはまだ恋ではないから。 もう少し時間をかけて、この気持ちを温めていきたい。 いつか、少女が恋を知るまで。 ひとしきり撫でてやると、子猫はそっと道を開けた。 「にゃー」 行ってもいいよ。 尻尾がパタパタと揺れている。 未だ丸くなって眠ったままの猫娘にちゃんちゃんこを掛けて、僕は傍らに腰を下ろした。 子猫は僕の横に寝そべる。 「お前、猫娘にさっきのこと話すなよ」 まどろみかけた子猫に念を押すと、わかっているのかいないのか「みー」と返事が返ってくる。 そんなことをしなくても、子猫が猫娘に僕の本心を伝えることはないのだろうけど。 (だって、僕は君のライバルなんだろうから) 眠る二匹の子猫に囲まれて、僕も静かに目を閉じた。 見ていたのは女の子じゃなくて、その服だったんだよ、猫娘。 そう告げたら、君は理由を聞くんだろうね。 『だって、猫娘に似合いそうじゃないか』 いや、駄目だ。それでは、猫娘が着ている姿を想像していたのがバレてしまうかもしれない。 なんとか上手いごまかしかたはないものか。 試行錯誤していると、小さく「にゃあ」と声がした。 今度こそ、僕の猫のお目覚めのようだ。 見下ろすと、まだ夢うつつの猫娘と目が合った。 「きたろー?」 あくびをしている彼女ににこりと笑いかけると、僕は口を開いた。 「おはよう。猫娘」 まずは謝ろう。 本気で人間の女の子を可愛いと思っていたわけではないと、そこだけは正直に言っておかなきゃ。 いつだって、僕が可愛いと思うのは君だけなのだから。 PR |
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(11/03)
(10/27)
(10/11)
(10/03)
(09/14)
プロフィール
HN:
とみぃ
性別:
女性
ブログ内検索
カウンター
最新トラックバック
|